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 今回は,行列式というものを考えます.

定義10.1
$n$次正方行列$A=(a_{ij})$に対して,値
\[\displaystyle\sum_{\sigma\in\mathfrak{S}_n}{\rm sgn}\sigma\cdot a_{1,\sigma(1)}a_{2,\sigma(2)}\cdots a_{n,\sigma(n)}\]を$A$の行列式といい,$|A|,{\rm det}A$あるいは
\[\left|\begin{array}{cccc}
a_{11} & a_{12} & \cdots &a_{1n} \\
a_{21} & a_{22} & \cdots &a_{2n} \\
\vdots & \vdots & &\vdots \\
a_{n1} & a_{n2} & \cdots &a_{nn} \\
\end{array}\right|\]などとかく.◆

ここで,前回やった置換が出てくるわけですね.

定義における\[\displaystyle\sum_{\sigma\in\mathfrak{S}_n}\]とはどういうことでしょうか.$\mathfrak{S}_n$は$n$次の置換全体の集合でしたから,$n$次置換$\sigma$について,
\[{\rm sgn}\sigma\cdot x_{1,\sigma(1)}x_{2,\sigma(2)}\cdots x_{n,\sigma(n)}\]の値を考えて,それらをすべて足せ,ということです.

意味が分からないので,$n$が小さいときに考えてみましょう.

例1
$n=2$のとき\[\left|\begin{array}{cccc}
a_{11} & a_{12} \\
a_{21} & a_{22}
\end{array}\right|\]を計算しましょう.
$\sigma$は\[\sigma_1=\left(\begin{array}{ccccc}
1 & 2 \\
1 & 2
\end{array}\right),\sigma_2=\left(\begin{array}{ccccc}
1 & 2 \\
2 & 1
\end{array}\right)\]の2つのみです.

$\sigma_1$の符号は$1$で,$\sigma_1(1)=1,\sigma_1(2)=2$だから
\[{\rm sgn}\sigma \cdot a_{1,\sigma(1)}a_{2,\sigma(2)}=a_{11}a_{22}\]
$\sigma_2$の符号は$-1$で,$\sigma_1 (1)=2,\sigma_1(2)=1$だから
\[{\rm sgn}\sigma \cdot a_{1,\sigma(1)} a_{2,\sigma(2)}=-a_{12}a_{21}\]
よって,\[\left|\begin{array}{cccc}
a_{11} & a_{12} \\
a_{21} & a_{22}
\end{array}\right|=a_{11}a_{22}-a_{12}a_{21}\]です.これが二次正方行列の行列式の公式です.

例2
$n=3$のとき\[\left|\begin{array}{cccc}
a_{11} & a_{12} & a_{13}\\
a_{21} & a_{22} & a_{23}\\
a_{31} & a_{32} & a_{33}
\end{array}\right|\]を計算しましょう.$\sigma$は\[\sigma_1=\left(\begin{array}{ccccc}
1 & 2 & 3 \\
1 & 2 & 3
\end{array}\right)={\rm id}\]\[\sigma_2=\left(\begin{array}{ccccc}
1 & 2 & 3 \\
1 & 3 & 2
\end{array}\right)=(2\; 3)\]\[\sigma_3=\left(\begin{array}{ccccc}
1 & 2 & 3 \\
2 & 1 & 3
\end{array}\right)=(1\; 2)\]\[\sigma_4=\left(\begin{array}{ccccc}
1 & 2 & 3 \\
2 & 3 & 1
\end{array}\right)=(1\; 2 \; 3)=(1\; 3)(1\; 2)\]\[\sigma_5=\left(\begin{array}{ccccc}
1 & 2 & 3 \\
3 & 1 & 2
\end{array}\right)=(1\; 3 \; 2)=(1\; 2)(1\; 3)\]\[\sigma_6=\left(\begin{array}{ccccc}
1 & 2 & 3 \\
3 & 2 & 1
\end{array}\right)=(1\; 3)\]の6つです.

$\sigma_1$の符号は$1$で,
\[{\rm sgn}\sigma \cdot a_{1,\sigma(1)}a_{2,\sigma(2)}a_{3,\sigma(3)}=a_{11}a_{22}a_{33}\]
$\sigma_2$の符号は$-1$で,
\[{\rm sgn}\sigma \cdot a_{1,\sigma(1)}a_{2,\sigma(2)}a_{3,\sigma(3)}=-a_{11}a_{23}a_{32}\]
$\sigma_3$の符号は$-1$で,
\[{\rm sgn}\sigma \cdot a_{1,\sigma(1)}a_{2,\sigma(2)}a_{3,\sigma(3)}=-a_{12}a_{21}a_{33}\]
$\sigma_4$の符号は$1$で,
\[{\rm sgn}\sigma \cdot a_{1,\sigma(1)}a_{2,\sigma(2)}a_{3,\sigma(3)}=a_{12}a_{23}a_{31}\]
$\sigma_5$の符号は$1$で,
\[{\rm sgn}\sigma \cdot a_{1,\sigma(1)}a_{2,\sigma(2)}a_{3,\sigma(3)}=a_{13}a_{21}a_{32}\]
$\sigma_6$の符号は$-1$で,
\[{\rm sgn}\sigma \cdot a_{1,\sigma(1)}a_{2,\sigma(2)}a_{3,\sigma(3)}=-a_{13}a_{22}a_{31}\]
よって,行列式はこれらをすべて足して,
\[a_{11}a_{22}a_{33}-a_{11}a_{23}a_{32}-a_{12}a_{21}a_{33}+a_{12}a_{23}a_{31}+a_{13}a_{21}a_{32}-a_{13}a_{22}a_{31}\]
です.

これをイメージで計算する方法を教えましょう.

例1’
まず2次の場合を考えます.2つの$\sigma$については,$a_{11}a_{22}$というのと$a_{12}a_{21}$がありましたが,この成分に注目すると以下のようになります.例えば,$\sigma_1$の場合は,$a_{11}$と$a_{22}$を色で塗り,$\sigma_2$の場合は,$a_{12}$と$a_{21}$を色で塗るというように(以下図).



このように,行列式の定義における\[a_{1,\sigma(1)}a_{2,\sigma(2)}\cdots a_{n,\sigma(n)}\]という部分は,元の$n$次正方行列の成分から,各行1個,しかもどの2つも列が被らないように1個ずつ選んで,それらを掛け合わせたことを意味します.

それでは,${\rm sgn}$はどのように考えれば良いでしょうか.
まず,$\sigma_1$の状態,すなわち対角に色がついた成分が並んでいる状態を「正常」だとします.$\sigma_2$は「正常」ではありません.正常にするために,二つの列を選んで交代させる操作を繰り返すことを考えます.$\sigma_2$は1列目と2列目をひっくり返せば$\sigma_1$,「正常」な状態に戻ります.このとき1回交換したので符号は$(-1)^1=-1$であると考えます.
$\sigma_1$は元から「正常」,つまり0回の交換したと考えて$(-1)^0=1$を符号にします.選んだ成分とそれに対応する符号をかける,そういってできた2つのものを足し合わせたのが$a_{11}a_{22}-a_{12}a_{21}$なのです.

例2’
同じことを$n=3$の場合で考えてみましょう.同じように,各行1個,しかもどの列もかぶっていないように色を塗ると下のようになります.



同様に$\sigma_1$の状態,すなわち対角に色がついた成分が並んでいる状態を「正常」だとします.
$\sigma_2$は2,3列目を交換すれば「正常」な状態になるので,符号は$(-1)^1=-1$.
$\sigma_3$は1,2列目を交換すれば「正常」な状態になるので,符号は$(-1)^1=-1$.
$\sigma_4$は1,2列目を交換して,そのあと2列目と3列目を交換すれば「正常」な状態になるので,符号は$(-1)^2=1$.
$\sigma_5$は1,3列目を交換して,そのあと2列目と3列目を交換すれば「正常」な状態になるので,符号は$(-1)^2=1$.
$\sigma_6$は1,3列目を交換すれば「正常」な状態になるので,符号は$(-1)^1=-1$.
あとは,選んだ成分と求めた符号を掛け,すべて足し合わせれば3次の行列式を得られます.

少し計算をしてみましょう.
例3
\[\left|\begin{array}{cccc}
2 & 3 \\
4 & 1
\end{array}\right|=2\cdot 1-3\cdot 4=-10\]\begin{eqnarray}&&\left|\begin{array}{cccc}
1 & 2 & 3\\
4 & 1 & 5\\
2 & 0 & -1
\end{array}\right| \\&= &1\cdot 1\cdot (-1)-1\cdot 5\cdot 0-2\cdot 4\cdot (-1)+2\cdot 5\cdot 2+3\cdot 4\cdot 0-3\cdot 1\cdot 2 \\
& = &21\end{eqnarray}

例4
4次の行列式を計算してみよう.

\[\left|\begin{array}{cccc}
1 & 0 & 3 & 2\\
1 & 0 & 0 & 2 \\
1 & 2 & 3 & 4 \\
-1 & -2 & -3 & 0 \\
\end{array}\right|\]

今までと同じように,各行から1個,しかもどの2つも列が被らないように1個ずつ選んでかけるのですが,今度は$4!=24$個もあって大変です.しかし,$0$が多くあり,$0$を含むと掛けたものは$0$になるので,必然として$0$を避けたもののみかけることになります.それは次の7個です(図の下に書いた+1,-1は符号).



行列式は,
\[12-12+24-12+12-12+12=24\]と求まります.

このように,行列式は定義に沿って計算することもできますが,行列が大きくなると計算量が莫大になります.次回以降は行列式の性質を探ることで簡単に計算する方法を学んで行きます.以下の演習問題も面白いと思うのでぜひチャレンジしてみてください.





演習問題

10.1 次の行列の行列式を計算せよ.
(1) \[\left(\begin{array}{cccc}
1 & 5 \\
9 & -8
\end{array}\right)\]
(2) \[\left(\begin{array}{cccc}
1 & 0 & 4 \\
3 & 2 & 5 \\
-1 & -2 & -4
\end{array}\right)\]
(3) \[\left(\begin{array}{cccc}
1 & 0 & 2 & 5\\
3 & 0 & 0 & 0 \\
-1 & 2 & 4 & 0 \\
-1 & -2 & -3 & 0 \\
\end{array}\right)\]

10.2 次の行列の行列式を計算せよ.
(1) $n$次正方行列\[\left(\begin{array}{cccc}
1 & & \cdots & \\
& 2 & \cdots & \\
\vdots & \vdots & & \vdots \\
& & \cdots & n \\
\end{array}\right)\]
(2) $n$次正方行列\[\left(\begin{array}{cccc}
& & & 1\\
& & 1 & \\
& \cdots & & \\
1 & & & \\
\end{array}\right)\]
(3) $n$次正方行列.1がジグザグに並んでいる.\[\left(\begin{array}{ccccc}
1 & 1 & & &\\
& 1 & 1 & & \\
& & 1 &\cdots & \\
& & & \vdots & \\
& & & \cdots & 1 \\
& & & & 1 \\
\end{array}\right)\]

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One Thought on “線形代数 第10回 行列式とその性質”

  • これらの数式は全部LaTeXiTみたいなやつ使って使っているのでしょうか…
    とてもわかりやすく見やすく、論理的で、色々勉強になります。

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